昔と今の「エモい」の違いとは|2000年代のエモ文化に見る言葉の変化

言葉は時代とともに意味を変えていくもの。とくに若者言葉や時代言葉は、社会やトレンドの変容に応じて流動的に形が変わっていきます。

音楽やファッションにおいて、大きく意味が異なった言葉の一つが「エモ」。今回は、昔と今の「エモい」の違いについてご紹介します✨

昔(2000年代)の「エモい」の意味とは?ルーツやジャンルを解説

ここでは、もともと使われていた「エモい」の意味やルーツをご紹介します。

いつの間にか失われていったあの頃のエモ……。ですが当時の音楽&ファッションキッズの体には、今でもエモの血が流れているんです!

昔の「エモい」とは、エモーショナルハードコアバンドへの評価の言葉

「エモ」「エモい」という言葉は、1999年頃に誕生したと考えられています。

もともとは、音楽ジャンルの一つ「エモーショナルハードコア」に対する音楽観・世界観に使用されてました。エモいの意味が広がった今でも、これらに対する「エモ」の使い方は変わっていません。

ハードコアとは、激しいビートと美しいメロディーが融合したジャンル

現在のジャパニーズシーンでも人気の「ハードコア」は、高速のリズムや攻撃的な歌詞が特徴的。

ロックの派生として生まれたジャンルであり、激しいビートに合わせたスクリーモやデスボイス、観客全員で合唱できる美しいメロディーラインなどを特色としています。

エモーショナルとは、感情を掻き立てるような曲調や音色

音楽におけるエモーショナルとは、聴く人の感情や情緒を掻き立てるような曲調・音色を指します。

感傷的な美しさを持つコード進行や和音・倍音が特徴的で、激しさと哀愁が共存する楽曲であり、伸びやかなメロディや空間的な音色が印象に残ります。

エモーショナルハードコアとは、ハードコアの美しさや哀愁をさらに引き出したジャンル

「エモい」の語源であるエモーショナルハードコアとは、ハードコアの激しさはそのままに、エモーショナルとしての情緒・美しさ・哀愁を色濃く取り入れたジャンルです。

ロックやジャズなどほかの音楽ジャンルと同様に、ジャンル自体に定義はありません。そのためエモーショナルハードコアであるかどうかは、聴く人が「エモいと思うかどうか」に委ねられています。

エモーショナルハードコアに取り入れられやすい要素

以下に、エモーショナルハードコアに取り入れやすい要素を記載します。

  • 心情や感情を吐露するような歌詞
  • セクションごとにデスボイス・クリーンボイスを使い分けるボーカル
  • BPM140以上の速い楽曲・ツーバスを取り入れたキックとビート
  • コーラスやリバーブを中心に、空間的な広がりを重視したエフェクト
  • 観客と大合唱(シンガロング)できる、わかりやすく美しいサビ

楽曲構成自体に大きな特色は定められておらず、一般的なJPOPに近いシンプルな構成から、プログレッシブ要素の強い難解な構成まで幅広く展開されています。

そのためエモーショナルハードコアとは曲構成や楽器構成ではなく和音やスケール・コード進行・BPM(テンポ)・歌詞・メロディーライン・楽器や歌声の音色などによって判断されるといえます。

「エモい」は音楽だけではない!ファッションを含めたカルチャー

エモは音楽ジャンルだけではなく、ファッションを含めたカルチャーを指して用いられていました。

エモ系ファッションとは、ヨーロッパの10代の若者を中心に流行しているジャンルの一つ。エモ系バンドの装いをまねたアイテム・コーデを指し、男女ともに中性的であることが特徴です。

当初のエモ系ファッションはタイトなジーンズやTシャツが取り入れられ、ピアスやタトゥーなどを含む身体改造が特徴的でした。また派手髪やゴシック系アイテム、バンドTシャツなど、ロックの側面が強い演出も目立ちます。

総じて、スケーター・グランジ・ゴシック・ロックなど、幅広いジャンルの特色を取り入れたジャンルといえるでしょう。

これがエモいだ!代表的なエモ系バンド5選

「昔のエモいの意味はわかったけれど、結局どんな音楽のこと?😶」という人のために、当時のエモ系バンドを代表するアーティストを5つご紹介します!

MY CHEMICAL ROMANCE

エモ系バンドの代表格といえば「マイケミ」ことMY CHEMICAL ROMANCE。とくにゴシック色を強く取り入れたビジュアルが特徴的です。エモーショナルな楽曲で、現代におけるロック・オペラを確立しました!

PARAMORE 

女性ボーカルのエモバンドといえば、絶対に欠かせないのがPARAMORE!紅一点のヘイリーは、エモカルチャーを愛する女の子たちのなかではカリスマ的存在でした。

FALL OUT BOY

エモシーンの時代を作ったアーティストとして、確実に名前が挙がるのがFALL OUT BOY。彼らなくしてエモは語れません。ハードコア色を強く受け継いだ激しい楽曲と、耳馴染みの良いポップなエッセンス、そして助走からカタルシスにつながるサビの解放感!エモの醍醐味と魅力を存分に味わせてくれます。

JACK’S MANNEQUIN

情緒を揺さぶる美しいメロディーラインとギターリフ、激しさのなかにも聴きやすさが内包されるのが魅力のJACK’S MANNEQUIN。初めて聴くのにどこか懐かしさを感じさせる楽曲は、まさにエモ系ならではの魅力。

FOREVER THE SICKEST KIDS

数あるエモバンドのなかでも、POP色が強いのがFOREVER THE SICKEST KIDS。当時の王道の楽曲構成ならではの親しみやすさと、節々から滲み出る音色やリフのエモさで、多くのエモキッズたちを虜にしました。

今の「エモい」の意味とは

ここでは、今の「エモい」の意味をご紹介します。現代のエモは昔と形が変わったと同時に、より多くの世代や属性において愛用されるようになりました。

今の「エモい」は、感傷的・情緒的な気持ちを表す言葉

今のエモいは、昔のエモいとは異なります。特定ジャンルの音楽やファッションに対してだけではなく、「感傷的・情緒的に感じるもの全般」に対して使われるようになりました。

そもそもエモいの語源である「エモーショナル」は「感情的な・情緒的な」という意味があります。今の「エモい」は直訳の通り、感情を揺さぶられるようなシーンや、情緒的な気持ちにさせられるシーンなどに使われる言葉となっています。

今の「エモい」に似ている言葉

感傷的な気持ちを指す「エモい」においては、類似する言葉が多く存在しています。たとえば……

  • ロマンティック
  • ドラマティック
  • ノスタルジック
  • センチメンタル
  • メランコリック
  • アンニュイ
  • ジーンとする・グッとくる
  • 切ない・儚い
  • 物恋しい・哀愁がある など

「なんだか切なくてグッとくる」「哀愁のある美しさ」「懐かしい感じがしてジーンとする」など、感傷的かつ抒情的な感情を総じて「エモい」と表現する傾向に。

つまり現代におけるエモいとは、感情が揺さぶられたときに使われる圧縮言語のようなものなのです。

類似した使われ方をする言葉では「ヤバい」が代表的です。「ヤバい」にも、嬉しい・興奮する・悲しい・苦しい・驚く・疲れたなど、さまざまな感情が圧縮されていますよね。

エモいもヤバいと同様に、幅広いシーンや感情において使われます。

2000年代のエモを着こなす!エモ系アイテム5選

ここでは、2000年代風のエモ系アイテムをご紹介します✨

昔のエモファッションは、今でもオシャレにコーデ可能!昔のエモを愛する人はもちろん、令和のファッション好きなあなたも、ぜひ昔のエモアイテムを楽しんでくださいね。

タイトなチビTシャツ

ライブハウスやフェスでも着やすい、タイトなチビTはエモコーデの定番。バンドのロゴを彷彿とさせるフロントデザインは、シンプルながらも存在感があります✨

チェーンベルト

エモファッションでは、パンクロック要素を感じさせるアイテムも人気。こちらのチェーンベルトはクリアな質感のプラスチック製で、クールなのに重量も軽くて付けやすい✨

猫耳ハット

ブラック&猫耳&チェーン&安全ピン!というエモの魅力をギュッと詰め込んだようなハット。2000年代のノスタルジックな魅力もありながら、トレンド要素もある合わせやすいデザインです。

厚底編み上げシューズ

エモ文化といえば、ハードなデザインのシューズやブーツは欠かせません。Demoniaの厚底シューズは、エモロックらしいエッジの強さを兼ね備えたオルタナティブな一品!

メッシュジャケット

サイケデリックな印象のメッシュジャケットは、クール&パンクでエモかっこいい!存在感のあるクロスの刺繍とサイドラインが印象的で、春~秋に羽織りやすい一着です👌

昔のエモを知ることで、今のエモいがもっと楽しくなる!

今回は、今と昔のエモいの違いをご紹介しました!

昔のエモ文化を愛していた人からすると、大衆的な今のエモいには少し寂しさを感じるときもありますよね。反対に今のエモいに慣れている人は、昔のエモ文化を知ることで音楽やファッションがさらに楽しくなりますよ✨

ぜひこの機会にエモカルチャーに触れて、自分の「エモい」をさらに広げていきましょう!

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